ハボック×ロイ(ヒューズ没後、ヒュロイ前提気味でヒューズ←ロイ)
2007.10.22.Mon.如月さくら
口に含んだ液体の味は、
あの時よりも酷く苦く感じた。

それは多分、
自分が幾分か彼に期待しすぎていた所為なのだろうと思う。





カフェオレ。





失ってしまったものを埋めようと、
もしくは誤魔化そうとして別段必死になっていたつもりは無かった。

けれど、今現在こうしてハボックの部屋に居る自分は、
少なからず彼に、
このぽっかりと開いてしまっている穴を埋めてもらおうとしている。

それだけは、事実だった。


シャワーから出ると、
ハボックは笑顔のままで私の濡れた髪を撫でた。

「ちゃんと乾かさないと、風邪ひいちまいますね。」

そう言って、私の手からタオルを取って優しく水滴を拭き取る。

軍人らしい、
大きなその腕で私の身体を包み込んで、ゆっくりと、丁寧に。

温かな彼の体温は、
徐々に冷えてきた私の身体に心地良い。

その温もりが、決してアイツのものと同じでないとしても。


ベッドへと入ろうとしない私を促すような事はせず、
けれどそれは命令を待つ部下という程忠実な瞳ではない。

ただ、私の隣に同じように座って、
僅かに触れあった肩でお互いの体温を確認できるだけだ。

「眠れませんか?」

不意に発せられた言葉に、何の事だろうと横を見る。

心配そうな、と表現するには優しすぎる、
けれど気遣っているとも嘘を言っているようにも見えないその顔。

沈黙を保てなくなった訳ではなく、
思った事をそのまま素直に言葉にしただけなのだろう。

「・・・そうだね、もう少し。」

ゆったりと流れる時間が、
けれど間違いなく流れている時間が、
二人の間に、自分以外の誰にでもあるもので。

肩から失われた温もりは、
そのまま軽く私の頭を撫でていく。

「何か、持ってきますね。」


両手に包み込まれたマグカップには、
コーヒーというにはあまりにも無理がある、
牛乳がしっかりと入っているであろうカフェオレ色。

飲めない訳でも、飲まない訳でもないのだが、
自分と親しい彼は、
必ずといっていい程コーヒーをカフェオレにしてよこしてくる。

子供扱いをするな。

以前そう言った時には、相変わらずへらへらと笑っていて。

けれど、
自分好みの味になっているそのカフェオレが、私はずっと好きだった。

コーヒーだけをいれるよりも少々手間のかかるそれは、
多分彼なりのこだわりがあったのだろう。


口に含んだその液体は、
見た目の色から想像していたものよりも、ずっと苦かった。

それは多分、
私が今目の前に居る彼に、
少なからず期待してしまっていたからなのだろう。

同じ味を、
彼と同じものを、
作ってくれるのではないか、と。


それ飲んでる時のお前さん、スゲェ嬉しそうなんだぜ。


彼は、そう言っていた。
その顔が見たいから、つい作ってしまうんだと。

もう二度と味わえない彼の味も、
自分はきっと忘れてしまっているんだろうけれど。

できる事ならばもう一度、
牛乳をたっぷり入れた、甘い甘い、温かなカフェオレを。



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This fanfiction is written by SakuraKisaragi.
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