ヒューズ×ロイ(運命を感じる刻、ヒューズ→ロイ)
2007.09.16.Sun.如月さくら
確か第一印象はお互い最悪だったはずで。

まさかこうして長い付き合いになるなどとは、
その当時にしてみたら思ってもみなかっただろう。

人の出会いなんてそんなものだ、と。

それが偶然でも、
運命なのだと言われればそうかもしれない。

不思議と、
コイツとの出会いは運命であれば良いと思っていた。





夕焼けの色





「・・・まーた仕事サボってこんなトコで。」

まだまだ昼間は夏かと思う程気温も上がっていたが、
夕方にもなれば随分と涼しくなっていた。

木陰で気持ちよさそうに眠っているのは、
東方司令部司令官のマスタング大佐。

仮にも佐官で、司令官で、尚且つ国家錬金術師だ。

そんな奴が、
例え司令部内であったとしても、
ここまで無防備に寝こけて良いはずがない。

「変わんねぇなぁ・・・」

腹の上に大事そうに抱えているのは、
きっと最近お気に入りの本なのだろう。

仕事も適度に片付いて、
けれどまだまだ処理するべき書類が残っている。

焦る必要は無いのだろうが、
ただのお昼寝如きで溜めておくのも間違っている。

目の前で眠っている彼が、
ほんの少しだけでも本気を出せば
大して時間などかからないであろう仕事量。

「ホント、変わんねぇよな・・・そーゆートコは。」

誰かに少しずつ迷惑をかけ、
けれどそれは、
コイツを大切に思っている人にしてみれば心地の良い程度で。

抜け出して、逃げだして、結局同じ場所で眠っている。

少々怒ってやろうか、などと思ってその場へやって来ても、
結局この寝顔を見ればそんな気などなくなってしまって。

「風邪ひくっつーの。」

なんとかは風邪をひかないと良く言うが。

コイツはもしかして、
紙一重で“なんとか”の方だったのだろうか。

ロイの優秀な副官が言うには、
此処数日良くこうして抜け出しているようだし。

風邪の兆候は、まだ無いらしい。

「・・・あんま、あいつ等に心配かけんなよ。」

しゃがみ込んでみても、
目を閉じているロイと視線が合う訳もなく。

独り言だと分っていながら喋りかけてしまう。

何度も何度も、
同じようにして此処へやって来る。

同じ場所に居れば、
直ぐに見つかると知っているくせに。

普段弱い部分など全く見せようとしない。
寧ろ、隠そうとしているようで。

なのに、こんな処は本当に子供だ。

「ほら、ロイ。もう起きろよ。」

くしゃり、とその黒髪に手を触れて。

ゆっくりと持ち上げられた瞼の下から、
綺麗な黒の瞳が覗いて。

じっとこちらを見つめているその双眸は、
三度だけ瞬きをした後でにっこりと表情を和らげて。

「お前の起こし方、嫌いじゃない。」

そう告げて、立ち上がる。

まるで眠ってなどいなかったかのように、
待ち合わせに遅れた相手を少し非難するように。

「でも、少し遅いな。」

チラ、と空へと視線を向け、
それから腕を伸ばして肩を廻して。

「そりゃまた、お待たせいたしました。」

夕日はオレンジ色で、とても綺麗だ。

自分と大して変わらない背丈も、
こちらがしゃがみ込んで見上げていれば大きく見えて。

職場が中央と東方とで離れて以来、
頻繁に会える訳でもなく、
こちらから電話をしても殆ど取り合ってもらえない。

まぁ、内容が内容だから仕方がないとは思っていても。

本当は下らない話で、
適当な内容でも、笑い合いたいだけなのだけれど。

いや本当は、
ただ単に声が聞きたいだけで。

理由を作って、電話ばかりして。
用事を作って、会いに来てみたり。

此処へ来る日を事前に伝えておけば、
毎日こうやって執務室から抜け出す事はなくなるかもしれない。

何度かそう思ったが、
結局驚かせてやりたくて日付を伝えずにいた。

休憩でも、サボりでも、読書でもないらしい。

それもあるらしいが、
どうやらそれだけではないらしい。

それに気付いた時は、ついつい笑ってしまった。

「ほら、もう戻るぞ。リザちゃんは怒ると怖ぇーしな。」

立ち上がってロイの横に並んで、
それから自分の手を差し出す。

「中尉は私に厳し過ぎると思わないか?」

ぶつぶつ言いながら俺の手を取って。


迎えに行けば素直についてくる。
ただ単に、見つけてほしいだけらしい。

この我侭な、
けれど運命の人は、夕日を綺麗だと呟いて。



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