ハボック×ロイ(ベッドの上で眠りに落ちるまでの間)
2007.08.21.Tue.如月さくら
僅かな月明かりだけが差し込んでくる部屋。
とっくに眠りについているはずの時間に、
未だ夢の世界へと旅立つ事も許さないまま。
「っは・・・・・・」
布を食んでいるらしく、くぐもった声が漏れる。
ベッドが音を立てる度に、
目の前の人はびくりと身体を震わせて。
「・・・大佐・・・・・・。」
腕を伸ばしてその頬に触れれば、
その嘘みたいに低い体温に驚いてしまう。
想い
一度でも手に入れたと実感してしまえば、
今まで抑えていたものをとどめておく事ができなくなってしまっていた。
気付けば、毎晩のようにこの部屋で自分以外の体温を感じている。
そこに居るのが徐々に当たり前の様にすら感じている自分。
本当は、自分のものなどではないと知っているのに。
「大佐。」
自分が与えるひとつひとつの刺激に、
敏感に、丁寧に応えてくれる素直な身体。
けれど同時に返ってくる声は、ひたすらの拒絶。
「も、やめ・・・ろ。」
俺の腕を弱い力で掴み、横に小さく首を振る。
「・・・嫌っスか?」
このやり取りを、もう何度繰り返してきたのだろう。
嫌かどうかを問えば、いやいやと首を左右に振る。
そのくせ、まるで誘うようにこちらへと視線を向けてきたり指を絡めてきたりして。
「ね、大佐。嫌ですか?」
心から、とにかく嫌という訳ではないらしい。
それだけは、辛うじて自分にも分かる。
けれど。
「俺にこうやって触られるのは、嫌っスか?」
表情は元々薄暗い部屋の中では分かるはずもない。
例え明るい照明の下であっても、この人はいつも自分の腕で顔を隠している。
こちらが何を聞いても、望んだ答えは返ってこない。
幾度互いの唇を重ねてみても、指を絡めてみても。
身体に触れて愛を囁いてみても、どうやらこちらの想いは半分も伝わっていないらしい。
他人だから、と言われてしまえば確かにその通りだとも思った。
お互い全てを分かり合うなんて事が出来ないのも仕方がないと思う。
それでも求めてしまう、自分の愚かしさなどとっくに自覚していて。
「・・・・・・すまない・・・。」
もしかしたら、意識すらはっきりとしていないのかもしれない。
聞こえるか聞こえないか分からないぐらい小さな声で、ぽつりと謝ってくる。
「大佐・・・」
どうして、謝るんですか?
何度か聞いた事があったが、
その都度返ってくるのは重ねて謝罪の言葉。
酷く辛そうな、切なげな声でそんな風に言われては、
それ以上何かをどうするという事も頭から追いやられてしまって。
「どうして謝るんスか。大佐は、何も悪い事なんてしてないでしょう?」
いやに冷たい頬をゆっくりと撫でながら、
見えない表情を窺いながら聞いてみる。
「・・・ごめんなさい・・・。」
ぎゅ、と自分の手を握りしめてそれだけを告げられる。
そんな事で、大佐の言葉の意味なんて俺が理解できる訳がない。
「大佐・・・。」
本当は知りたいはずなのに、
どうしても踏み込めずにいる彼の領域。
肉体は今此処に、
確かに自分の腕の中にあるのに、全く攫めずにいる。
最近は明け方になった頃にやっと睡魔が訪れる。
直ぐ隣で眠っている大佐の表情は、やはり安堵しているようには到底見えずに。
「・・・俺は、どうしたら良いんスか・・・・・・?」
夢の中で一体誰に何を言われているというのか。
俺の知らない処で、この人はどれだけの事を抱えているのか。
きっとこらからも明かされる事など無い彼の想い。
知ってしまえばそれだけで壊れてしまいそうな危うさ。
話される事も、聞く事もなく、何も分からないまま、
また夜になれば此処で不毛な求め合いがはじまるんだろう。
浅い眠りへとつけば、またすぐに夜がくる――。
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にゃんこのしっぽ
This fanfiction is written by SakuraKisaragi.
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