ハボック×ロイ(背中に見惚れて仕事が捗らない日も)
2007.07.30.Mon.如月さくら
君の背中に。
仕事中、ふと顔を上げれば目に付くその姿。
自分と作りは変わらないはずの軍服で身を包み、
毅然と・・・というよりは、ダラダラと時間を過ごしている彼。
書類に走らせるペンを止め、
頬杖をついて暫く眺めやる。
高すぎて持て余しているらしい背。
今は居ない小さな錬金術師を思い出せば、自然と苦笑が零れる。
「ご機嫌スね。」
上官の許可をもらわねば通らない書類を持って、
マスタングの机の前に立ってハボックは言う。
「ん?そう、見えるか?」
こちらが座っていれば
自ずと見上げる形になる相手へと視線を向ける。
仕事中、しかも自分以外にも
上官が居る部屋でも気にせず煙草を咥えたまま、
ハボックは呆れた様な表情で付け足した。
「ご機嫌なのは良いですけど、仕事して下さいね。」
先程からずっとコイツの背を眺めていた所為で、
当然の事ながら自分の手元にある書類が進んでいない。
お前の所為だよ、と口にはせず、
けれどそういう意味も含んで笑って誤魔化す。
「全く・・・残業なんかになったら、俺泣いちまいますよ?」
最近では休みが合う日は前日から一緒に居る事が多くなった。
今日もそんな約束はしていなかったが、
どうやらハボックはそのつもりだったらしい。
一緒に帰るでしょ、と部屋に居る他の人には聞こえない様に言って。
「・・・うん。」
既に提出する書類を渡し終え、
自分の席へと戻るその背に、小さく頷く。
気付けば自分の部屋に彼の存在がある事が当たり前に思える。
そこに実際居なくとも、
微かな気配が残っているだけで安心している自分に気付いた。
部屋に匂いが残るのが忍びないと、
室内では極力減らしているらしい煙草の本数。
窓を開け放ってぼんやりと外を見ているその背中。
ベッドに沈むように身体を投げ出したまま、
差し込む月明かりに目を細めてハボックを見つめる。
「・・・・・・あぁ・・・、起こしちゃいました?」
こちらへと気付いて煙草の火を消して窓を閉めると、
ゆっくりとした動きでベッドへと近付いてくる。
「・・・眠れないのか?」
キシ、と音を立てて僅かに傾くマットに促されるように、
寝起きだというのに随分と冷えた腕を伸ばす。
「ん?あー・・・そっスねぇ・・・」
ハボックは伸ばした腕を支える様に手を出し、
その温かな指先を静かにロイの指へと絡める。
「あぁ・・・違いますよ、大佐が悪いんじゃないから。」
眠れないという言葉に頷いた自分に対し、
少なからず申し訳無さそうな顔をする様子に穏やかに笑って。
「んでも、大佐の顔見てっと眠れねぇのはホントかも。」
はじめは自分の前で素直に眠る事すら拒んでいた彼が、
今では朝まで目覚めずに眠っていられるようになった。
時折眉をひそめる事はあっても、
夜中に突然目覚めて怯えた風になる事があっても、
暫くそのまま傍に居れば、落ち着いてくれるようになって。
偶に思いついた様に詫びられる事はあっても、
少しは自分を受け入れてくれているらしい様子に安心している。
「・・・私の、所為か?」
不安げに揺らぐ瞳に、そういうんじゃなくて、と笑って。
「大佐が俺の傍で眠ってくれてるのが、嬉しくて。」
もう少し寝ましょうか、とロイの隣へと横になり、
そっと頬に手を触れる。
「・・・・・・ハボック・・・。」
不意にびくりと身体を震わせた様子に、
一瞬躊躇して、それでも構わずに抱き寄せる。
「これなら、寝れそう。」
だからこのままで、と続ければ、
了承の意を示しているのかロイの腕が背に廻る。
冷えた指先も、
そのあたたかな背に触れればぬくもりを与えられる。
大きくて、優しい彼の背は、
今は見えなくともたしかに此処にある。
眠れないと呟いた彼も、
今はもう幸せな夢を見ているに違いない。
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This fanfiction is written by SakuraKisaragi.
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