ハボック×ロイ(何時もとほんの少しだけ違う二人)
2007.07.28.Sat.如月さくら
何時もと、違う。

それはほんの小さな事で、
ぼんやりしていたら見過ごしてしまいそうな程の事。

大した事ではない。
そう、別に重大な違いではない。

きっとそれは・・・
そう、それは、俺の気の所為。





たしかなもの





仕事を終え、一息つく姿。
そんな些細な事でさえ、目を奪われる。
今に始まった事ではないが、自分の様子に苦笑してしまう。
綺麗で、可愛らしい。

「終わったぁ・・・。」

立ち上がって、伸びをする。
奪われた視線は、相変わらずその姿を追う。

執務室には、
今程仕事を終えた大佐と、俺の二人だけが残っていた。



朝、部下から報告を聞く姿。
キラキラと光る瞳。

昼、何時もの様に食事をする姿。
楽しそうに笑っている口元。

夜、机に向かって書類を読む姿。
さらさらで綺麗な黒い髪。



自分の仕事は既に終わっていた。
何もせず、ただ上司の仕事の様子を眺める。

他人には退屈なこの時間も、
俺にとっては頬の筋肉が緩む時間で。

同じ部屋に、同じ空間に居ると云うだけで、
どうしてこんなにも、幸せを感じられるのだろう。

「は、ぼ、く。」
「うひゃっ!」

突然、後ろに体温を感じる。
耳元に話し掛けられて、思わず間抜けな声を上げてしまった。

「む・・・、失礼なヤツだな・・・。」

首に腕を廻し、
拗ねた様に顎で肩をぐりぐりと攻撃しながら、
頬を膨らませて不平を言われる。

「突然、何スか。」

驚いたじゃないですか、と振り返る。
すると、悪戯っぽい笑みを浮かべた貴方が居る。

「今夜、お前の部屋に行っても良い?」

照れくさそうに、けれどしっかりとした口調で聞かれる。

「今日は、頑張っただろう?」

普段からしっかり処理していれば、
こんな風に残業する必要は無かったはずだが。
既に日常と化した大佐のサボリ癖から言えば、
確かに今日はかなりの量をこなしたと言えるだろう。


しかし、だ。

「なぁ、ハボック?駄目??」

甘えるように頬を寄せ、
それから上目遣いで聞いてくる。

「駄目・・・?」

段々と不安げになっていくその瞳。
淋しげに揺れる漆黒の双眸。

今日の大佐は、何だかおかしい。

普段なら。

自分から接触を求めてくる事なんて、ないのに。
ましてや。
執務室内では、
たとえ二人きりだと分かっていても、
俺が伸ばした腕を跳ね除けてみせるのに。

素直に甘えて欲しいと思っていたのは事実。
けれど、このタイミングだとは考えていなかった。


ふと、背に感じていたぬくもりが無くなる。


「・・・何だ・・・・・・?」

殆ど無意識のうちに、
そのぬくもりを、大佐を、貴方を、抱きしめていた。

怪訝な顔で見られる。

「少尉、どうした?こら、離さないか。」

何時もと違うのは、寧ろ俺の方だろうか。
言葉の棘とは違い、その表情は僅かに綻んでいるようで。

「ハボック?なぁ、おい、どうした?」

ぺたぺたと俺の頬に触れるひやりとした感覚。
細くて色白なその手が、不思議そうに輪郭をなぞる。

「少尉?はーぼーくー。」

綺麗に整えられた指先で頬を突付かれる。
長すぎない爪が、小さな痛みをつれてくる。

「・・・ジャン・・・・・・?」

不安げな声に、はっとする。

見れば、綺麗なふたつの漆黒と目が合う。

何か言いたげに揺れる双眸。
けれど、言葉を紡がない唇。


「・・・帰ろう?」

次いで告げられた言葉は、弱々しくも精一杯の、音。

「一緒に、帰ろう?」

もう一度聞こえた音は、いくらかはっきりした、声。


おかしいのはやはり、自分の方だと思った。

貴方はいつだって、俺に言葉をくれていて。
断られる事はあっても、触れる事も許されて。
何時だって此処に、居てくれて。


夜になって冷え込んだ街。

遠慮がちに繋がれた指から感じる、確かなぬくもり。



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This fanfiction is written by SakuraKisaragi.
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