ハボック×ロイ(雨の降り続く七夕の日)
2007.07.07.Sat.如月さくら
何処で知ったのかは忘れてしまったが、
たしかに今日だったような気がする。
二日ほど前から降り続いている雨を、
机に積まれた書類に目もくれず眺める。
「・・・これでは会えんな・・・。」
雨で増水した川は危険だからと、
両岸の恋人は逢瀬できないとかなんとか。
「こんな雨ぐらいで・・・。」
小さく溜め息を吐いて、それから思い当たる。
雨がふっても
住宅街近くの川が徐々に増水してきた所為で、
いくつか脆くなった場所が危ないらしい。
部下の報告を聞いてから、
面倒な事になる前に
適当に対処しようと何人かをそちらへ向かわせた。
軍部がやるべき事かどうかは置いておいて、
少なくとも今日は大事になりそうな仕事もなかったので、
大して何も考えずにそうさせた。
それは適切な判断だっただろうし、
未だ降り止まない雨を見れば迅速な対応と言える。
「・・・・・・、」
机に積まれた書類は、湿気の所為でくたびれているようだ。
時計は既に昼を過ぎ、
雨が地面を叩く心地良い音に眠気を誘われる。
先程あった現場からの報告では、
今日は修復作業に随分と手間取っているらしい。
それを聞いていたアイツは、手伝ってくると外へ出て行った。
この、雨の中に。
司令官室に篭ってひとり書類に向かっていても、
何となく集中できずに同じ文字を何度も読み返してしまう。
いつもなら、この時間になると部屋に来るアイツは居ない。
「よりにもよってどうしてこんな日に・・・。」
文献なんぞ読まなければ良かった、などと見当違いな事を思う。
きっと恋人達にとっては、大切な日だろうに。
自分達がそんな関係かどうかは、良く分からないが。
それでも、そんな日に一緒に居られない事がどうしても許せない。
仕事が捗らないのも、きっとアイツの所為だ。
気付けば外は夜になっていて、
降り続いていた雨も大人しくなっていた。
無理矢理終らせた仕事は、
肉体的にも精神的にもそれなりにダメージを与えたらしく、
司令部を出る身体はやけにだるかった。
「・・・・・・はぁ・・・。」
結局会えず終いだったなと思えば、つい溜め息が出てしまう。
仕事だから、と言われれば仕方が無いし、
明日になればまた会える事など、はじめから分かっていたけれど。
無意識に、報告されていた場所へと足が向いてしまう。
其処に彼が居る保証など、何処にも無いくせに。
増水していた川の水は、随分と穏やかに流れている。
これなら、明日も呼び出される事はないだろう。
川べりを歩いていくと、ふと、知った匂いに気付く。
風上へと視線を動かすと、
一般人は立ち入り禁止にしているはずの作業現場に人影を見つける。
近付かずとも、それが誰かは分かった。
分かったから、近付く事がなんとなくできずに。
「・・・・・・、」
仕事をやりきって少し満足げな彼の横顔を見れば、
張り詰めていた何かも途切れたようで。
「あれ・・・大佐?何してんスか、こんなトコで。」
気配に気付いたのか、
こちらへと顔を向けて驚いた表情になる。
煙草にそえていた手を離し、ゆっくりと歩いてきて。
「え、何スか、大佐の家ってこっちじゃ無いっスよね。」
司令部に居る時よりも人懐っこい、
雨と泥ではしゃぎまわった後の犬のように構ってくる。
「どしたんスか?急用??」
ねぇねぇ、とはしゃいでいる彼は、
私の仕事が自分の所為で捗らなかった事など知るよしも無い。
「あ・・・、もしかして、俺に会いに来てくれたとか?」
だったら嬉しいなー、と表情を緩める。
作業後で汚れてしまっている髪も、相変わらず綺麗だ。
「た・・・い、さ?」
ほんの少し、
傍に居なかっただけで随分と会っていなかった様な気がする。
今目の前に居るのは、間違いなく何時ものアイツだ。
「た、大佐、なんスか、期待していいんスか?」
身体を預けた私に腕を廻そうか廻すまいかと悩んでいるらしい。
見上げた表情は、ぐるぐるとおかしなことになっている。
「疲れたから、お前の家に行く。」
此処からそう遠くも無い場所に彼の部屋がある事も知っている。
私の言葉に一瞬で顔を真っ赤にして、それから嬉しそうに笑う。
「へへー、じゃあまず一緒に風呂入って下さい。」
隣を歩きながら言われた言葉には答えずに、
繋がれた手から伝わるぬくもりに微笑む。
年に一度しか会えないようでは、
私は耐えられないかもしれない。
ぼんやりと空を見上げれば、
きっと彼らも出会えているのだろうと思えて・・・。
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にゃんこのしっぽ
This fanfiction is written by SakuraKisaragi.
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