ハボック×ロイ(雨の日のロイ宅、ヒューズ←ロイ前提気味)
2007.07.04.Wed.如月さくら
もしも。





雨が、降り続いていた。

あの日も、こんな雨が。


――サァァ・・・

まるで霧の様な、けれどシャワーの様に降り注ぐ雨は、
部屋の何処に居ても遠慮なくその音で、
湿度で、存在を誇示している。

「・・・雨、か・・・・・・。」

薄暗い自室で、本に囲まれたまま目覚め、呟く。

どれ程眠っていたのか、窓の外は真っ暗だった。

昨晩から降り続いた雨の所為で、気分は最悪だった。

「嫌いじゃ、ないんだがな・・・」

窓の外を見やれば、幾筋もの雨の軌跡。

「ただ少し、」


淋しくなるんだ。

誰かを思い出して。

誰も、思い出せなくて。


――ガチャリ。

不意に開かれる扉の音に驚いてそちらへと顔を動かす。

其処に立って居たのは、
薄暗い部屋には似つかわしくない、明るい色。

「あ、大佐。目、覚めましたか。」

濡れた金糸は、雨の中で遊んでいたのだろうか。

「すんません、勝手に上がっちまって。あ、何か食います?」

色々買ってきましたよ、と手にしていた袋を軽く持ち上げてみせる。

「・・・大佐?」

どうしたんスか、と首を傾げて聞いてくる。

「・・・・・・少尉。」

私に呼ばれ、何ですか?と笑顔になって近付いてくる。

「なんでも、」

なんでもない。
単純に、ただそう告げようとした途端、窓の外が激しく光った。

部屋の中が一瞬酷く明るく照らし出され、
その後すぐに、何か温かいもので包まれる。

「雷・・・、」

落ちましたかね、とすぐ上から聞こえてくる声。

見上げれば、何時もの綺麗な瞳と目が合う。

「大丈夫ですか?こう云うの、苦手じゃない?」

あぁ、苦手なのは雨でしたっけ、と笑いながら。

「大丈夫っスよ、此処には落ちませんから。」

よしよし、とまるで子供をあやす様に頭を撫でられる。
僅かに震えた身体は、温かく優しい腕に抱かれていて。

「俺が居ますから。」

此処に、と耳元に囁かれる。


誰かと同じ台詞。

誰かとは、違う体温。


「大佐。」


ねぇ、大佐。

俺の声、聞こえてますか。

ねぇ、大佐。

俺の言葉、届いてますか。


ゆるりと目が覚めれば、そこは自分の部屋だった。

自分以外誰も居ないはずの部屋に感じる、微かな気配。

何時の間に寝室へ来ていたのか、
しっかりとベッドの上に横たえられた身体。

周りを見ても、誰も居ない。

「・・・気の所為、か・・・・・・」

夢で見た幻か、想いが見せた幻影か。
小さく溜め息をついて、身体を起こす。

「んぁ・・・?」

「え・・・」

もぞ、と直ぐ傍で何かが動く。

驚いてそちらへと視線を向ければ、
それは夢で見たそれと同じだったか?

「あぁ・・・目、覚めたんスか。」

ふにゃ、と笑いかけてくる。

「はぼ・・・」

相変わらず薄暗い部屋で、
似つかわしくない明るい色。

「怖い夢でも、見たんスか?」

私の手を取って、覗き込んでくる優しい瞳。

「どうしたんスか、そんな顔して。」

そっと頬に指を触れて、髪を梳かれる。

「ちゃんと、眠れましたか?」

ゆっくりとした動作で、抱き寄せられる。

温かな、身体に。
優しい、腕に。

そっと、包まれて。


外は、相変わらず雨が降り続いているようだ。

明日には、晴れるらしいと言っていたけれど。

もしも。

雨が続けば、
お前は明日も、此処に居るのだろうか。


「なぁ、ハボック・・・?」

聞く気なんて、無かったけれど。

ただ名前を呼べば、応えてくれそうな気がして。



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