ヒューズ×ロイ(士官学校時代、眠りに誘う為の癖)
2007.08.23.Thu.りん
いつの間にか、身に付いていた癖
安心させるためなのか
眠りにいざなう為なのか
手を伸ばすと ついやってしまうコト…





手のひらのリズム





休日の昼下がり。
「ぅうーー、眠い……。」
「眠いなー…。」

外はいい天気だというのに、俺とロイは部屋の机につっぷしている。
部屋に響く互いの声には、覇気がかけらも見当たらない。

「ここのところ、徹夜続きだから…。」
「連日ってなると、キツイなぁ。」
苦笑しながら答えた俺にロイは顔を上げ、
じとっとこちらを睨みつけながら
「………誰のせいだと思ってる。」
と、一言。
「……悪ぃ。」
しゅんと肩を竦めて詫びても、その機嫌は直らないようで。
「ホント、悪かったって。ごめんなさい。」
再び、謝る。
まぁ、今回は確実に俺が悪いしなぁ。
完璧ロイは巻き添えを食らっただけだから…。

ロイはといえば、むすっとした表情で横を向き
「もういい……、寝る。」
と言うと、ベッドへと歩いて行った。
「昼寝だ、昼寝。今日まで頑張ったんだからな。」
ぼすっと音を立てて横になるロイ。
「まぁ、あらかた片付いたし。
あとは俺一人でやっちまうよ。お疲れ様。」

ペナルティーとして膨大に出された課題も、
二人で寝ずにやった分もう殆ど片付いていて。
あとは俺一人でも、今日中に仕上がるだろう。
これで、明日の締め切りにも間に合うし。

「さぁって、もうひと踏ん張りすっかなー。」
コキコキと首を鳴らして再び目の前の課題へと向き直る。
「あ、ロイ。お前さん、いくら眠いからって晩飯は食うだろ??
 その時間になったらまた起こしてやっから、安心しろな。」
ベッドにできた山に向かって声をかけると、
こっちに背を向けていたロイが振り返った。

その表情は、何やら不満気で。
おいおい、ロイちゃん。どーしてそんな顔するわけ??
「ん?どーした、ロイ??」
浮かんだ疑問を、そのまま投げかけてみた。

「………、お前も寝てない、だろう?」

ポツリ、と質問で返してくるロイ。
「まぁ…、そうだな。でも、あと少しだから。
 今夜は寝れると思うし、大丈夫だろ。」

口では眠いと言いつつも、
こう徹夜が続くと睡眠を欲しなくなる体質なのか
実はそんなに眠くないのだ。
「それに…
 今までお前さんに無理言って手伝ってもらってたしな。」
だから大丈夫、と笑いながら返しても、
ロイの表情はそのまま変わらず。
どうして、そんな顔するのか分からなくて、
困ったように笑って首を傾げてみる。

「お前も、一緒に昼寝だ。」
ベッドの主は不機嫌な顔のまま、そう一言返ってきた。
その思ってもない一言に、俺は面食らってしまう。

「俺も一緒に…?」
「ん。」
ロイは布団の中で、こくりと頷いた。
「お前も、昼寝、だ。」
再びそう言うと、頭まですっぽりと布団をかぶってしまった。
も、もしかしてロイってば、俺のこと心配してくれた??


途端に嬉しくなった俺は、
ホントはそれだけで眠気も吹っ飛んでしまうのだが。
手をつけていたレポート用紙を放り出して
急いでロイの元へと向かう。

「おうっ、じゃぁ、俺もお前さんと一緒に昼寝だ!!」
そう言ってから、勢いよくロイの横に寝転がった。
今の俺の顔、鏡で見たら、頬緩みまくってんだろうなぁ。

「ちょっ、もっと静かに来んかっ。危ないだろうが。」
「悪ぃ、悪ぃ。っと…失礼しまーす。」
ロイの小言に軽く詫びると、
一声かけて一緒の布団に潜り込みロイの身体に腕を回す。

「こら、ヒューズ!くっつくな!!寝にくいだろう?!」
腕の中でじたばたと動き、
口では不平が次から次へと出してくるロイ。
「はーぃ、はいロイちゃーん、落ち着いて。
 興奮すると、せっかくの昼寝ができなくなっちまうぞー?」

それを意に介さず間延びした口調で言いながら、
幼子をあやす様に背中をとんとんと叩いた。
「煩いっっ。お前が離れれば済む話だ。」
尚もロイはじたばたと動く。

「だってよー、離れたら俺、ベッドから落ちちまうもん。
 それとも、俺に床で寝ろっての?」
元々シングルサイズのベッドだ。
男二人で寝るには狭すぎる。

「自分のベッドがあるだろうが。」
…まぁ、ごもっともな意見ですけど。
でも、ここで引き下がる俺じゃない。

「え、ほら、『一緒に昼寝しよう』っつったの、お前さんだろ?」
ぴんっと自分の人差し指を上げて言えば、
腕の中のロイは、俺のこんな意見でもぐっと詰まってしまい
「別にそう言うつもりで言ったわけじゃ……。
 まぁ、良い。寝るだけだぞ?」

そう言うと、諦めたようにため息をつき、ロイは身体の力を抜いた。
「もちろんっ。一緒に寝るだけ。」
へへへっ、と笑って返せば、
ロイも安心したのか先ほどよりも僅かに自分の方へと寄ってきた。

そんな姿を可愛いな、と思いつつ
背中にまわした手を再びとんとんと動かして
「お疲れ様、ロイ。おやすみ。」
「……おやすみ。」
短いあいさつを交わして、瞳を閉じる。

ちっとも眠たくない俺は再び目を開けたのだが、
ロイを見るとすっかり睡眠モードだ。

コチッ…コチッ…コチッ…
とん……とん……とん……

時計の秒針の音に、自然と俺の手の動きが合わさる。
耳には、ロイの寝息と秒針と俺の手の音しか聴こえない。

コチッ…コチッ…コチッ…
とん……とん……とん……

手を伸ばしたら ついやってしまう癖
とんとんと、優しくたたく
少しでも安心できるように
少しでもよく眠れるように
少しでも好きな気持ちが伝わるように...
たくさんの想いを込めて 優しく

コチッ…コチッ…コチッ…コチッ…
とん………とん……………とん……

……ん、何か眠…くなってきた…?
ロイが眠りやすいようにしているつもりが、
自分にまで眠気がやってきたようだ。
秒針のリズムに合わせているつもりでも、
遠のく意識とともに手の動きも緩慢になっていった。

やっぱ俺も……寝ちまおう。



コチッ…コチッ…コチッ…
「はれ?…もう、夜か??」
思った以上に熟睡してしまったらしく、
昼寝から目覚めてみると、部屋はもうすっかり暗くなっていた。

って、夜?!!!!

「晩飯ーー?!ぎゃーーー!!
 食堂、閉まっちまってるー!!!!」
急いで眼鏡をかけて時計を見ても、
すでに夕食の時間は過ぎてしまっていて。
ってか、課題、まだ終わってねぇじゃん!!

「おっ起きろ、ロイ!!!晩飯、食いっぱぐれた!!!」
ゆさゆさと未だ夢の住人のロイの身体を揺さぶって起こす。

「むーーー?」
「おーーきーーろーーー!!!起きてよ、ロイちゃーん。」
課題、これから一人で仕上げるのなんて、無理だ。
だから、必死になってロイを起さねば。

「なんだ…?夕食の時間か…??」
もそもそと、見当違いなことを口走りながら、漸くロイが起きてきた。
「だから違ぇって!!晩飯、食いっぱぐれただけじゃねぇっ
 このままじゃ課題が仕上がんねぇっていう非常事態だ!!」
ロイの肩を揺さぶりながら必死で訴える。

すると意識がしっかり覚醒してきたのか、瞬きを2回してから
「なんだと?!このバカヒューズ!!
 お前、夕食の時間に起こすと言ったじゃないか!!」
一気にまくし立てられた。
「確かに言ったけど…
 んなもん、寝ちまってたらわかんねぇに決まってるだろうが!!」
と、負けじと返す俺。
「しかも、課題が終わらんだと?!
 空きっ腹で徹夜か?冗談じゃない。」
「俺だって、嫌だ!!」

このままぎゃぁぎゃぁと、不毛な言い争いが続きそうだったが…

「………こんなことしてる暇があったら、とっとと課題片付けちまうか…」
「そうだな……。」
お互い我に返り、深いため息をつくと、二人でのそりと机に向かう。


今夜も、長い夜になりそうだ…。

でも、ロイと一緒なら、なんだって楽しいんだよな。



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This fanfiction is written by Rin.
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